【MEMSマイクロホンの選び方】


MEMSマイクロホンを選定する際は、まず「出力方式」と「音孔位置」を確認し、その上で感度、S/N、AOP、周波数特性、サイズなどの仕様を比較することが重要です。

出力方式

MEMSマイクロホンには、アナログ出力タイプとデジタル出力タイプがあります。アナログMEMSマイクロホンは、音圧に応じたアナログ電気信号を出力するため、外部のオーディオ回路やA/Dコンバータなどと組み合わせて使用します。 一方、デジタルMEMSマイクロホンでは、PDM(Pulse Density Modulation)などのデジタル信号を出力します。マイコンやDSPなど、デジタル処理を行う機器に直接接続しやすいことが特徴です。 回路構成や使用するプロセッサに合わせて、適切な出力方式を選択します。

音孔位置

MEMSマイクロホンには、音孔がパッケージの上面にある「トップポート」と、底面にある「ボトムポート」のタイプがあります。 トップポートは基板上面から音を取り込む構造、ボトムポートは基板に設けた音孔などを通して音を取り込む構造です。 マイクロホンを実装する基板や筐体の構造、音の取り込み位置などを考慮して選択します。

サイズ

MEMSマイクロホンは小型のパッケージに収められており、製品によって外形寸法や高さが異なります。 限られたスペースへの実装では、長さ・幅だけでなく、部品の高さも確認する必要があります。また、トップポートとボトムポートでは、基板や筐体側に必要となる音孔の構造も異なるため、実装スペースと合わせて確認します。

感度(Sensitivity)

感度は、マイクロホンに入力された音圧に対して、どの程度の出力信号を得られるかを示す仕様です。入力音圧は、国際規格やJISで1Pa(=94dB SPL、距離1m、1kHzサイン波)と定められており、出力信号は、アナログMEMSマイクロホンではdBV(0dB = 1V)、デジタルMEMSマイクロホンではdBFS(0dB = 扱える上限、Full Scale)で表されます。 また、製品一覧には「-26 dB ±1 dB」のような表記があります。ここで「-26 dB」が基準となる感度、「±1 dB」が感度公差を示しています。 感度の数値だけでなく、感度公差も製品選定時の重要なポイントです。例えば「-26 dB ±1 dB」の場合、規定された条件における感度のばらつきが、基準値に対して±1 dBの範囲で規定されています。 同じMEMSマイクロホンでも「-26 dB ±1 dB」と「-26 dB ±3 dB」のように感度公差が異なる製品があります。特に複数個のマイクロホンを使用するマイクアレイなどでは、個体間の感度差も考慮して製品を選択します。 また、製品によっては「-38 dB ±1 dB」や「-40 dB ±1 dB」のように、異なる感度仕様の製品もあります。そのため、製品一覧では「感度」と「感度公差」を合わせて確認することをおすすめします。

S/N

(SN比, Signal to noise ratio)は、信号とノイズの比率を示す仕様です。上述の感度の値と、無音状態での出力(=固有ノイズ)の比を示しており、同じ感度のマイクロホンであっても、S/Nが大きいものの方がマイクロホン自身が発生する固有ノイズが小さく、僅かな音まで捉えることができます。 基本的に、マイクロホンの後段の回路で信号の音量を増幅したとしても、固有ノイズも増幅されるためS/Nを上げることはできません。マイクロホンを選択する際の重要な仕様となります。

AOP

AOP(Acoustic Overload Point)は、マイクロホンが、どの程度の大きさの音圧までを、正常に電気信号に変換できるかを示す仕様です。通常、閾値となる歪み率も規定されており、AOPを超える音圧は、歪みが大きくなり、音割れ(クリッピング)を引き起こしたり、マイクロホンにダメージを与える可能性があります。 大きな音が入力される可能性がある用途では、必要な音圧レベルに対して十分なAOPを持つ製品を選択することが重要です。

周波数特性(Frequency Response)

周波数特性は、マイクロホンが低音から高音まで、どの周波数帯域の音を捉えられるかを示す仕様です。 製品によって対応する周波数範囲が異なるため、音声を中心に使用するのか、より広い周波数帯域の音を扱うのかなど、用途に合わせて確認します。 一般的に人間の可聴帯域は20Hzから20kHzと言われていますが、特に広帯域のMEMSマイクロホンでは、その全帯域をカバーする製品もあります。

位相(Phase)

位相は、波形の1周期(0°~360°)の中での位置を指しますが、一部のマイクロホンでは、出力波形の周期的なズレが一定範囲内に管理されています。 複数個のマイク信号を合成するマイクロホンアレイやビームフォーミング、逆相の音によって雑音を相殺するアクティブノイズキャンセリングなどでは、マイクロホンから出力される波形が揃っているかどうかが性能に影響するため、 位相が適切に管理された、位相規定タイプは有力な選択肢になります。

防水性

Same Skyでは、デジタルPDM出力・上面音孔タイプのCMM-3424DT-26165-TRをIPX7防水タイプとしてラインナップしています。外形寸法は4.00 × 3.00 × 1.15mm、感度は-26dB ±1dB、S/Nは65dB、AOPは120dB SPLです。 防水性能が必要な機器では、マイクロホン単体の防水仕様だけでなく、音孔部分を含む筐体構造や防水部材、基板実装状態など、製品全体の構造を考慮する必要があります。 防水性能が必要な用途では、データシートに記載された条件を確認した上で、使用環境に適した製品を選定してください。



【アナログMEMSマイクロホンとデジタルPDM MEMSマイクロホン】


MEMSマイクロホンには、大きく分けてアナログ出力タイプとデジタルPDM出力タイプがあります。
アナログとデジタルのどちらを選ぶかは、マイク単体の性能だけでなく、使用するプロセッサー、信号処理回路、電源、基板構成などを含めて決定することが重要です。

アナログMEMSマイクロホン

アナログMEMSマイクロホンは、音圧を電気信号に変換し、アナログ信号として出力します。後段にアンプやADCなどを配置して、音声処理回路へ接続する構成に適しています。 アナログ信号を扱うため、使用する回路やADC、基板上の信号経路などを含めてシステムを設計します。

デジタルPDM MEMSマイクロホン

デジタルMEMSマイクロホンは、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)によるデジタル信号を出力します。PDM入力に対応したプロセッサーや音声処理ICなどと組み合わせて使用します。 Same SkyのデジタルMEMSマイクロホンには、20Hzから対応する広帯域タイプや、クロック周波数に応じて低電力モードなどを利用できる製品があります。音声認識や複数マイクを使用する音声処理など、デジタル信号処理を行う機器にも適しています。



【トップポートとボトムポートの違い】


MEMSマイクロホンは、音を取り込む音孔の位置によって、上面音孔(トップポート)と底面音孔(ボトムポート)に分けられます。 上面音孔と底面音孔のどちらを選ぶかは、マイクの性能だけでなく、基板のレイアウト、基板上の開口部、筐体構造、音の通り道などを考慮して決定します。 Same Skyでは、アナログMEMSマイクロホン、デジタルPDM MEMSマイクロホンのいずれについても、上面音孔タイプと底面音孔タイプをラインナップしています。

上面音孔タイプ

上面音孔タイプは、MEMSマイクロホンのパッケージ上面から音を取り込みます。実装基板に穴を設ける必要がなく、ECMや他の一般的な音響部品と作用する方向が同じため、比較的扱いやすい形状タイプです。

底面音孔タイプ

底面音孔タイプは、パッケージ底面側から音を取り込みます。実装する基板に音響用の開口部を設けて使用します。上面音孔の場合は、基板と機器筐体の間にMEMSマイクの高さ分の隙間が必要ですが、底面音孔の場合は密着させられるため、最小限のスペースでマイク基板を搭載可能です。



【MEMSマイクロホンとECMの違い】


マイクロホンには、MEMSマイクロホンのほか、エレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM)があります。どちらも音圧を電気信号に変換するマイクロホンですが、構造や実装方法が異なります。MEMSマイクロホンとECMのどちらを選ぶかは、単純に音質だけで決めるのではなく、実装方法、必要なサイズ、出力方式、回路構成、必要な音響性能などを総合的に検討することが重要です。 特に小型機器や基板への自動実装、複数マイクを使用した音声処理などでは、MEMSマイクロホンが選択肢となります。一方、高S/Nかつシンプルな回路設計による指向性が求められる場合や、既存のアナログ回路を利用する場合などには、ECMが適する場合があります。    エレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM)製品ページ

構造

MEMSマイクロホンはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用した小型マイクロホンであり、多くの場合、半導体技術によって作られた振動板ユニットとオーディオアンプ回路が基板上に配置・パッケージされた構造です。ECMはエレクトレット材料を利用した、古くからあるコンデンサ型マイクロホンです。

実装

MEMSマイクロホンは基本的にSMT・リフロー実装タイプです。ECMにはリード線付き、ピン付き、SMTタイプなど、様々な実装タイプがあります。

サイズ

一般的にMEMSマイクロホンの方が小型です。MEMSマイクロホンは長方形がほとんどであり、ECMは円筒形がほとんどです。

出力

MEMSマイクロホンにはアナログ出力タイプとデジタル出力タイプがありますが、ほぼすべてのECMはアナログ出力タイプです。

指向性

通常、MEMSマイクロホンは無指向性です。ECMには単一指向性、双指向性(ノイズキャンセル)、無指向性があります。
※複数個の無指向性マイクロホンを使用して指向性を作る技術もあります。


【MEMSマイクロホンアレイとビームフォーミング】


MEMSマイクロホンは、1個だけで使用するだけでなく、複数個を組み合わせたマイクロホンアレイとして使用することもできます。 複数のマイクロホンで音声を取得し、それぞれの信号の時間差やレベル差などを利用して信号処理を行うことで、特定方向からの音を強調したり、周囲のノイズを抑制したりする構成が可能になります。 このような用途では、個々のマイクロホンの性能だけでなく、感度公差、S/N、周波数特性、マイク間の配置などを含めてシステム全体を設計することが重要です。 Same Skyには、20Hzから対応する広帯域MEMSマイクロホンもラインナップされており、マイクアレイや信号処理を必要とする用途での選択肢となります。    MEMSマイクロホンアレイのご紹介(技術ブログ)

ビームフォーミング

ビームフォーミングは、複数のマイクロホンから得られた信号を処理し、特定の方向から到来する音を捉えやすくする技術です。スマートスピーカーなどの音声入力機器や会議システムなど、話者の方向を考慮した音声処理に利用されています。

ノイズキャンセル・音源方向の検出

複数のMEMSマイクロホンを使用することで、音源の方向を推定したり、目的の音声と周囲のノイズを区別したりするための信号処理に利用できます。



【MEMSマイクロホンの用途】


音声入力・音声認識

MEMSマイクロホンは、スマートフォン、タブレット、パソコン、ウェアラブル機器などの音声入力や音声認識に使用されています。小型で実装しやすく、アナログ出力タイプに加えてPDM出力タイプも選択できるため、音声信号を扱うさまざまな機器に利用されています。

音声通話・コミュニケーション

スマートフォン、ヘッドセット、Web会議システム、インターホンなど、音声によるコミュニケーションを行う機器にもMEMSマイクロホンが使用されています。複数のマイクロホンを配置する場合には、各マイクロホンの特性が揃っていることも重要であり、小型でSMTに対応するMEMSマイクロホンは実装しやすさも兼ね備えています。

収音・音声記録

スマートフォン、ICレコーダー、ボイスレコーダーなど、音声を記録する機器にもMEMSマイクロホンが使用されています。指向性などの音響特性が重視される用途ではECMが使用されることもありますが、特に小型製品ではMEMSマイクロホンが適しています。

防水・屋外用途

防水性が求められる機器では、防水性能を備えたMEMSマイクロホンが選択肢となります。Same SkyのMEMSマイクロホンには、IPX7防水に対応したCMM-3424DT-26165-TRもあります。防水用途では、マイクロホン単体の仕様だけでなく、筐体や音響構造を含めた防水設計も考慮する必要があります。



【MEMSマイクロホン FAQ】


MEMSマイクロホンとは何ですか?

MEMS技術を利用して小型化されたマイクロホンです。小型パッケージでSMT実装に対応する製品が多く、電子機器への組み込みに適しています。Same Skyでは、アナログ出力タイプとデジタルPDM出力タイプをラインナップしています。

アナログMEMSとデジタルPDM MEMSのどちらを選べばよいですか?

使用するプロセッサーや音声処理回路、基板構成に合わせて選択します。アナログMEMSマイクロホンはアナログ信号として出力するため、後段にアンプやADCなどを配置する構成に適しています。デジタルPDM MEMSマイクロホンは、PDM入力に対応したプロセッサーや音声処理ICなどと組み合わせて使用します。

トップポートとボトムポートはどのように選べばよいですか?

音孔の位置だけでなく、基板のレイアウト、基板上の開口部、筐体構造、音の通り道などを考慮して選択します。基板に音響用の開口部を設けられる場合はボトムポート、基板上に開口部を設けず、パッケージ上面から音を取り込む構造ではトップポートが適しています。

MEMSマイクロホンの「-26 dB ±1 dB」は何を意味しますか?

「-26 dB」は基準となる感度を、「±1 dB」は感度公差を示しています。例えば「-26 dB ±1 dB」の場合、規定された測定条件における感度が、基準値に対して±1 dBの範囲で規定されています。複数のマイクロホンを使用する場合には、感度公差も製品選定時の確認項目となります。

MEMSマイクロホンのS/Nが大きいほうがよいのはなぜですか?

S/N(Signal-to-Noise Ratio)は、マイクロホンが取得する信号と、マイクロホン自身が発生する固有ノイズとの関係を示す仕様です。一般的にS/Nが大きい製品ほど固有ノイズが小さく、微小な音を扱う用途でも有利になります。製品選定では、感度だけでなくS/Nも確認することが重要です。

AOPが高いMEMSマイクロホンを選ぶ必要があるのはどのような場合ですか?

大きな音圧が入力される可能性がある用途では、AOP(Acoustic Overload Point)の高い製品が適しています。AOPを超える音圧では歪みが大きくなるため、想定される最大音圧に対して十分なAOPを持つ製品を選択します。

MEMSマイクロホンの周波数特性はどのように選べばよいですか?

用途で必要となる音の周波数帯域に合わせて選択します。音声を中心に扱う場合と、より広い周波数帯域の音を扱う場合では必要な周波数特性が異なります。Same Skyには20Hzから対応する広帯域MEMSマイクロホンもあります。

MEMSマイクロホンを複数使用する場合、何に注意すればよいですか?

感度公差、S/N、周波数特性、位相、マイクロホン間の配置などを確認する必要があります。特にマイクロホンアレイやビームフォーミングでは、各マイクロホンの特性差が信号処理の結果に影響するため、個々のマイクロホンの仕様だけでなく、システム全体で検討することが重要です。

防水MEMSマイクロホンを使用すれば、機器全体を防水できますか?

マイクロホン単体が防水仕様であっても、機器全体が自動的に防水になるわけではありません。音孔部分を含む筐体構造、防水部材、基板実装状態などを含めて、機器全体として防水設計を行う必要があります。Same SkyにはIPX7防水に対応したCMM-3424DT-26165-TRがあります。



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